TC Takeuchi

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PROJECT
STORY

PROJECT STORY

工事を支える水面下の業務
想定外は無数にある

護岸ブロック積み(土砂災害復旧)

INTRODUCTION

山中河川上流。仮復旧後の土砂災害箇所に、護岸ブロックを設置する公共工事。重機4台、人員4人。現場監督はキャリア20年以上の川上で、これまでに幾度も担当してきた工事でした。本稿では川上が遭遇した想定外の事象や、表からは見えない業務を追います。

EPISODE.01

現場は用意されているわけではない。1カ月をかけて「辿りつく」

大量の木を伐採しないと現場に辿りつけない。それが一つ目のイレギュラーでした。土木工事には、表からは見えない準備業務が数多くあります。例えば現場の特定。山中には明確な目印はありません。図面と資料をもとに慎重に工事箇所を把握します。また本工事に先立ち、重機やダンプカーが通るための仮設道工事を行います。その予定場所に植林がされていたことから、当初の計画にはない伐採作業が必要となりました。木を1本1本チェーンソーで切り、数本ごとに重機でスペースのある場所に移動。枝を落とし、丸太にします。丸太の搬出にあたっては、現場に入れる4tダンプでは積載量が限られているため、いったん自社の山に持ち帰り、そこから大型トラックに積み替えることで対応しました。仮設道も一気に全距離を作るのではありません。木を伐採した箇所にダンプで土を運び、ショベルカーでならして仮設道を作り、またその奥へ行って、木を伐採し、さらにその先の仮設道を造る。その作業を繰り返します。伐採した木は約150本。運んだ土は4tダンプで1600台分ほど。約1カ月をかけ、1km弱の仮設道を敷設しました。

EPISODE.02

地籍図を片手に、地権者を訪ね歩く

思わぬ作業が発生した仮設道工事ですが、実はその工事に入るにあたっても、さらなる事前準備を行っています。まずは仮設道が図面通り設置できるかの確認。仮設道の位置によっては工事の進行が早くも遅くもなるので、重機オペレーターとも相談しながら検討し、場合によっては違うルートを行政に提案することもあります。その上で、施工現場の地権者の方を、挨拶と許可取りのために訪ね歩きます。最終的な調整は行政で行いますが、その動きを待つと工期に間に合わなくなる恐れがあるため、まずは現場の人間が直接訪問する場合がほとんどです。今回の工事では地権者20軒を訪ね歩きました。地籍図を元に訪問するのですが、そのエリアに住んでいない方もいれば、何代も前から名前が更新されていない場合もあります。そういった際には近所の方に尋ねたり、身内の方を通して許可をとるなどして対応します。特に今回は、伐採する木が杉やヒノキといった木材資源だったため、後々の補償問題などに備えて正式な許可が必要でした。こういった地権者訪問に約2週間。さらに前述した仮設道敷設の約1カ月を経て、ようやく本工事へと入りました。

EPISODE.03

「念のため」のさらに上をゆく事態がある

ブロックは6箇所に設置。予定通りにいけば1カ月強の工程でしたが、イレギュラーは雨天時の水量でした。現場は上流で川幅も狭く、流れ込む水量は多くないはずでしたが、まずは掘削現場から水を逃がすコルゲート管がオーバーフロー。掘削箇所が埋まったほか、管自体も数km先まで流されました。もともと念のため、設計では径40cmのところを80cmに変更していたにも関わらずの事態でした。そして極め付けは竣工間近のある朝のこと。現場に到着した川上は目を疑いました。固定したはずのブロックが、川の真ん中に垂直に屹立していたからです。これまでに見たことのない光景が、そこにありました。「知られていない地下水流があったのかもしれません」と川上。知らない土地での作業は測りがたいと、改めて実感した出来事でした。様々なイレギュラーを乗り越えて、約半年後にようやく竣エ。「正直、やれやれという気持ちでした。自然には勝てませんね」。そこがこの仕事の難しさであり、面白さでもある、と川上は語ります。実はこの段階ですでに、川上は作業の合間を利用して、次の工事の下準備を進めています。土木工事の水面下では、表からは見えない様々な業務や配慮が行われ、想定外もありえる現場に立ち向かっています。

工事内容

2019年10月16日〜2021年02月26日
砂防災害復旧工事
復旧延長L=50.4m 左岸L=13.1m 右岸L=37.3m
コンクリートブロック積工A=179m2

PROJECT STORY

工事は「1人ではできない」
連携のための舵取りを見極める

堤防築堤(治水対策)

INTRODUCTION

高梁川流域、日羽の治水工事。豪雨で浸水した場所に土を盛り、連接ブロックを設置して護岸します。工区を分割し、複数社で施工するプロジェクト。うち1工区を、総合評価による岡山県の入札にて受注しました。担当は現場監督歴15年以上の坪井です。

EPISODE.01

作業の流れをきらないこと、メンバーの体調を気遣うこと

現場は高梁川の主流沿い。すぐ側には民家がありますが、これまで堤防はありませんでした。2018年の西日本豪雨の際には隣接する国道まで浸水。対岸は2箇所が決壊し、災害直後にもたけうちで復旧作業を行っています。築堤工事自体は、たけうちの得意分野の工事です。ただし受注金額・施工規模ともに、たけうちのなかでも最大案件だったため、普段の倍の人数である10人近くが現場入りしました。幾つもの工程が同時並行で進行。斜面の下部にはすでに連接ブロックが貼られている一方で、車道に近い上部ではショベルカーを動かし、その前段階作業である段きり(階段状に地盤を削る作業)を行っています。工期に余裕があるとは言えないなかで、複数の工程を管理する坪井が気をつけていたことは、作業の流れを切らないこととメンバーの体調を気遣うこと。「工事は1人ではできないですから」(坪井)。休憩を挟むタイミングの見極めも重要で、進行状況とメンバーの動きを見ながら声をかけました。

EPISODE.02

雨量は5mmを越えると要注意

河川工事は雨と水との戦いです。なかでもブロックを据えるための掘削作業では、川より低い位置まで掘り進めるため、水は必ず入ってきます。それらはポンプで強制的に排水しました。当初はポンプ数を3台と見積もっていましたが降雨の際の水位には追いつかず、台数を5台に増加。併せて発電機も大きいものに変更しました。ポンプのうち1台は予備。最大で同時に4台までが稼働しました。他県の土木関係者からは、降雨量の少ない岡山は工事がやりやすいと言われますが、それでも雨への警戒は必須です。どれだけ掘っても、掘っている最中に雨がふれば水位が上がり、周りから崩れてきます。雨量は5mmを越えると要注意。降雨量の時間あたりの増え方にも注意を払います。今回の現場近くにはライブカメラが設置され、水量計も映っているので、そういったものも利用しながら、状況を適宜把握しました。また土木工事では、雨が降ると土を触ることができません。雨の日にも進行可能な作業を用意し、工事の進行が止まるのを防ぎました。

EPISODE.03

「ここまでは急がないと怖い」

工事の山場の一つが、まずは先年の大雨で増水した水位までブロック積みを完成させることでした。坪井は、大雨が2日続けば危険があると想定。「ここまでは急いでやっておかないと怖いな、と」(坪井)。その高さに向けて工期を詰めました。たけうちは下請けを入れずにほぼ自社内で施工するため、効率的な作業の流れが作りやすく、クオリティも安定するメリットがあります。1週間ごとの工程表はタイトに作成し、だれもが確認ができるような状態にして、全体で進行を急ぎました。また、同じ堤防を複数業者で区分けして造成しているため、他業者と工区同士が隣接します。共通の仮設道を使用するため、ダンプカーの通行調整や誘導員の配置などが必要でした。たけうちが一番奥の工区ということもあり、特に他社との連携に気を配りました。3ヶ月後、無事に目標の高さまで工事完了。自社と他社の状況を踏まえ、どこで押し、どこで引くのか。その舵取りを経て目標を達成できたことは大きな経験になったと坪井は語ります。なお、本稿制作の時点では、まだ工事は進行中。現場の頑張りは続いています。

工事内容

2020年10月22日〜2021年07月30日
河川工事
施工延長(左岸)L=150.0m 築堤盛土工V=12,129m3 連結ブロックエA=3,326m2
法面整形(切土部)(ICT)A=553m2 法面整形(盛土部)(ICT)A=3,051m2
ふとんかごL=604.8m